北海道新聞 平成18年10月18日 夕刊

生活

福祉有償運送登録制、“発車”不調 道内運営協まだ6割   2006/10/18 15:28

 高齢者や障害者の足を確保するため、NPО法人などが行う移送サービス「福祉有償運送」。道路運送法の改正で十月から事業者は国への登録が義務づけられたが、その審査を行う運営協議会を設置している道内市町村は約六割にとどまっていることが分かった。登録なしのサービス提供は違反行為で摘発対象となる。全国的にも協議会設置が進んでいない背景には、競合する運送業者との調整が難しいこともあり、利用者からは今後の取り組みに不安の声も上がっている。

 留萌管内苫前町は未設置自治体の一つ。これまでは町社会福祉協議会が移送サービスを実施していた。町は改正法の施行に備え、今年初めから運営協議会の設置を模索してきたが、タクシー業者らが参加を承諾せず、設置に至っていない。

 町内のサービス利用者は約五十人。町は暫定措置として、九月半ば、運営協議会の審査が不要な町自身が事業者となり、サービスを継続することを決めた。

 胆振管内豊浦町でも協議会は設置されていない。同町のNPO法人「友づれワーク」(大野啓道代表)は今年三月、職員が二種免許を取得し、「福祉タクシー業者」として移送サービスを続けている。

 改正道路運送法では、NPO法人などが移送サービス事業を行う場合、各自治体の運営協議会でサービスの必要性や対価について審議し、合意を得た上で国土交通省へ申請することを義務付けた。

 だが、北海道運輸局によると、道内百八十市町村のうち、九月末時点で協議会を設置したのは百十一カ所にとどまった。

 従来、移送サービスはNPO法人などが福祉車両や自家用車を使って障害者や高齢者を実費程度で運送してきた。利用料金は通常、タクシーの半額程度。有償の旅客輸送は原則として国交相の許可事業者しか認められていないが、高齢化に伴って福祉移送サービスの需要が急増したため、国は許可なしのサービスも事実上黙認してきた。

 タクシー業界は「白タク行為」と強く批判してきた経緯があり、登録制への移行を「運営協議会の場で利用料について業界の意見を反映させることができる」として、歓迎する意見もある。

 北海道ハイヤー協会(札幌)は改正法施行前、道内の会員に対して、協議会への参加を呼びかけた。担当者は「タクシー業界のすき間を、NPOに埋めてもらうのは喜ぶべきこと」と話す。

 一方で、石狩管内のあるタクシー業者は「タクシー業界も福祉車両を導入するなど対応を進めているのに、低価格のNPOがサービスを始めると顧客を奪われてしまう」と運営協議会設置に消極的。別の業者も「運送業者の反対が続けば行政も調整は難しいだろう」と話す。

 こうした中、国交省は十月以降も運営協議会が設置されていない自治体には一年間の猶予を設け、無登録業者への厳正な処罰はしないとの通達を出した。

 だが、札幌市内で移送サービスを行うNPO法人「ホップ障害者地域生活支援センター」の竹田保代表理事は「協議会がなければ、利用者のために『もぐり』のサービスをせざるを得ない団体も出てくる。そうなれば法改正前と状況が変わらない」と危惧(きぐ)を表明した。