「会社法」の全体的な説明
          
■旧有限会社と株式会社の比較表■
 
                 ■会社法の非公開と公開会社の比較表■

  商法や有限会社法ができてから、相当の年月が経ち、世の中は様々に変化してきました。これまでは商法の部分的な改正でしのいできましたが、ご存知の通り「商法」は、カタカナ表記でいかにも古めかしい法律でした。

 また、本来株式会社とは、株式を公開するような中大規模な組織を前提としていましたが、実際には小規模な会社であっても有限会社とせず、取引の必要、対外的な信用の度合いなどから、「株式会社」を選択し、取締役の数合わせのために家族などを名目的な取締役にするなど、本来の法律の趣旨からは離れた状態で会社が設立され、運営されてきたのが実態でした。

 今回の改正により、非常に多くの改革がなされる訳ですが、現在有限会社や株式会社を運営している経営者にとっては、無関心ではいられないことです。会社の設立の業務を手掛ける私どもにとっても、詳細に分析した上で、起業のお手伝いをしなければなりません。

                登記の変更についての案内がでました。→「会社登記Q&A」

         平成18年2月7日会社法施行規則 発表されました→「会社法施行規則」

                 〃  会社計算規則           →「会社計算規則」   

                 〃   電子公告規則          →「電子公告規則」

           「会社法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」

                         
★大きな変更点★

1.有限会社法の廃止

  ・「会社法」が施行されますと、新に「有限会社」をつくることはできなくなります。

2.株式会社に二つの概念が誕生
  
@公開会社
    ・資本と経営の分離形態をとり、中大規模な会社組織を前提

  
A(株式)譲渡制限会社
    ・現在の有限会社の制度を引継ぐような、小規模、少人数の会社であり、
     個人的な色彩の強い会社を前提

3.最低資本金規制の撤廃
  ・有限会社 300万円、株式会社 1000万円の最低資本金の規制を撤廃し
   現在ある「1円会社」と称されている新事業創出促進法の特例による設立を常態化する。

4.合同会社(日本版LLC)の新設 LLC=Limited Liability Company
  ・直訳すると「責任に制限のある会社」となります。責任は有限で役員の権限や利益配分
   など自由に決定することができ、高い技術力や特許をもつ個人やベンチャー企業が起業
   しやすくした会社組織であり、取締役や監査役などの設置も不要です。

■これ以外にも、変更された点はたくさんありますが、順を追ってご確認ください。

 変更点を理解するためには、現在の「有限会社」と「株式会社」が、どのように規制されて
 いるかを最初に確認する必要があります。

 以下の表は、有限会社と株式会社の比較表です。          

新会社法による「公開会社」と「譲渡制限会社」の比較


                                    
              ★変更点の説明★


1.有限会社法の廃止

  ・「会社法」が施行されますと、新に「有限会社」をつくることはできなくなります。
  
  ■現在ある有限会社はどうなるか?
    現在180万社といわれています有限会社は二つに分かれると考えられます。

  @現行の「有限会社」としてそのまま存続する。
   法律上の経過措置として、現在のまま存続することが認められます。しかし、いつまでも
   存続できるかどうかは不明です。

   この場合の最大のメリットは、一切の費用がかからないことです。一般に、制度の変更
   に伴い印刷物や看板、HP、請求書などなど変更には莫大な費用がかかるものです。

  A新「会社法」の施行後に株式会社へ移行する。
   ・資本金は現在のままでよいことになります。(最低資本金が撤廃)
  
   ・メリットとしては、株式会社となり、対外的な信用が高まると考えられる点ですが、
    デメリットとして、
    
■取締役に任期発生→期限毎に役員変更登記必要
    ■決算広告が義務付けられる。
    ■変更に伴い、各種の変更費用が発生する。


2.株式会社に二つの概念が誕生
  @公開会社
    ・資本と経営の分離形態をとり、中大規模な会社組織を前提

      これまでの株式会社の制度をほぼ引継ぐことになります。

  A(株式)譲渡制限会社
    ・現在の有限会社の制度を引継ぐような、小規模、少人数の会社であり、
     個人的な色彩の強い会社を前提

     取締役は1名でも可能としており、現在の有限会社の制度を引継ぐような会社形態

3.最低資本金規制の撤廃
  ・有限会社 300万円、株式会社 1000万円の最低資本金の規制を撤廃し現在あ
   る「1円会社」と称されている新事業創出促進法の特例による設立を常態化する。

   資本金の規制がなくなりますので、新たな起業がしやすくなります。経済産業省が
  「1円起業の」制度を導入したところ、それまで年間8万5000社まで落ち込んだ起業数
  が10万まで回復したことにより導入された制度です。

   
資本金を少なく、株式会社を設立できるといっても、資本が小さければ、対外的な信用を
   得られることはありませんので注意が必要です。


4.合同会社(日本版LLC)の新設 LLC=Limited Liability Company
  ・直訳すると「責任に制限のある会社」となります。責任は有限で役員の権限や利益配分
   など自由に決定することができ、高い技術力や特許をもつ個人やベンチャー企業が起業
   しやすくした会社組織であり、取締役や監査役などの設置も不要です。

  
・合名会社、合資会社はそのまま存続します。

5.会社設立時の規制の緩和
  会社の設立に際しては、時代の変化と共に意味のなくなった規制が撤退されたり緩和され
  ました。

  
@類似商号の規制の撤廃
   これまで、同一の市区町村において、同一の事業目的でありながら類似した商号は登記
   を受付てもらえませんでした。
   交通網、情報網の発達と共に、市区町村で規制しても意味のない時代になったのを背景
   に撤廃されました。

   今までは、法律上の要件を守っていれば、それでよい時代から、相手の商号と紛らわしい
   商号を使い営業をしていた場合、相手方から不正競争防止法に基づき損害賠償請求を突
   然受けることにもなりかねませんので、全国的に有名な企業名を真似て設立すると、問題
   が発生することも考えられますので、この点は要注意です。

  
A会社の目的
   会社には事業の目的があり、それを登記しなければならないことになっています。

   これまでは、会社の目的を定めても、公証人に定款を認証していただく段階でチェックさ
   れ、具体的かつ明確なものでなければなりませんでした。
   
   まだ、詳細な方向は見えていませんが、@の類似商号の規制の撤廃にあわせて「目的」
   も包括的なものでもよいことになりそうな見込みです。

  
B現物出資の規制の緩和
   これまでの規制は、資本の5分の1又は500万円を超える場合は、裁判所が選任する
   検査役による調査を義務付けられていました。

   資本の5分の1という規制が撤廃されました。

   今後は、資本が500万円未満であれば、全て現物出資でも可能となり、既に個人事業
   主として商売をしている人が株式会社を設立しやすくなりました。
   (裁判所選任の検査が不要とはいえ、税理士等の検査は必要です。)

  C設立時の資本金の保管
    会社の設立で、定款の認証を受け、登記をする段階では、金融機関の発行する
    「払込金保管証明書」というのを添付し、間違いなく資本が金融機関に存在している
    ことを証明してもらう必要がありました。

    募集設立の場合は、今まで通りですが、発起設立の場合は「残高証明」でよいことに
    なりました。

6.その他の変更

  
@会社の機関
   
 ・会計参与制度の新設
      会社が任意に設置できる新たな機関です。会計参与になれるのは、税理士と会計
      士です。
      (各法人を含む)会社の計算書類を作成して株主や会社の債権者に開示するのが
      任務となります。

      会社がこの制度を導入する場合は、登記しなければなりません。また、定款での規
     定が必要であり、任期は原則2年、定款で10年まで延長できることになっています。

      あくまでも設置は任意の機関ですが、株式譲渡制限会社では、取締役会を置いた
     場合は監査役をおく必要がありますが、それに代えて会計参与を置くことや、両方を
     置くことも可能となります。

   
A株主総会の権限強化
     取締役会を設置しない会社では、全ての事項を株主総会で決めることになります。
     取締役会がないのですから当然のことですが、各取締役への監督機能も果たすこと
     になります。

     また、株主総会の開催を容易にするための変更として、株主総会の召集通知は会日
     の1週間前でよくなりました。
     さらに短縮したい場合は、定款で定めることができます。
     通知の方法も郵便等によらなくても、Eメール等でもよいことになりました。
     開催場所もどこでもよくなりました。
     (今までは本店所在地またはその隣接地という規定あり)

   B株券の発行
     
原則不発行となり、発行する場合は定款に定めを要します。

   
C株主への剰余金の分配
     株主総会の決議をもって可能ですが、
     純資産が300万円に満たない場合はできません。

   
D譲渡制限の効力
     相続や合併の場合は、株式の譲渡制限を設けていても、それを超えて株式の移転
     ができたのですが、これが改められ、定款で定めることにより、
     相続の場合でも株式を移転するには
     「会社の承認」が必要と定めを置くことができるようになりました。


 さて、もうすぐ新しい「会社のルール」が動き出します。
 
これから起業して、新しい会社の設立をお考えの方も、現在有限会社で会社を運営している経営者の皆さんも、あるいは株式会社を経営している経営者も、無関心ではいられません。

 ★起業をする場合、すぐするべきか、待つべきか?

 ★有限会社がなくなるので、今のうちに設立しておくべきか?

 ★既存の有限会社は、株式会社に移行すべきか、有限のまま継続すべきか?

 ★既存の株式会社は、譲渡制限会社とするべきか否か?

 経営者にとっては、難しい選択を迫られています。

                                        
 
                        


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