交通事故・損害賠償請求  自賠責保険請求、任意保険請求、賠償額算定


【2】自賠責の保険金額
下記の表は現在の保険金額の一覧表です。傷害が限度額120万円、後遺障害は介護が必要な場合とそうでない場合に分かれています。死亡は3000万円の限度額です。

■傷害

 完全に治癒するケガのことです。人間は一般的に自分の体で自分を治してゆくものです。多少の傷や、小さな後遺症(いわゆる自覚症状はあるけれども、レントゲンやMRIなどで検査しても異常が見つけられないもの=他覚症状がないもの)で、世間一般に後遺症と認められないものも含みます。

 自分ではまだ完全に治っていないと思っても、医師も保険会社も認めてくれない場合があります。それらも傷害といいます。

■後遺障害

 これ以上、治療しても回復の見込めない時点を、症状固定といいますが、その時点で、医師に後遺障害診断書を書いてもらい、自賠責に申請して認められるのを後遺障害といいます。
 1級から軽度の14級までに分かれています。

■死亡

 説明するまでもありませんね。一番悲しいことです。
ここでは、一番多い傷害の場合の120万円の限度額の意味について詳しく説明します。

120万円の限度額と健康保険

 傷害の自賠責保険の支払限度額は120万円です。

最初にケガをして病院にかかった場合の診療費について確認してください。

 交通事故により病院で治療する場合、以下の3つの方法があります。

1.自由診療
2.労災保険適用
3.健康保険適用

 自由診療というのは、病院が診療報酬制度に左右されないで自由に治療費を決める、という意味で言われます。労災、健保はお分かりですね。

 事故の過失割合で相手が全面的に悪く、こちらの過失が小さい場合は自由診療でも、すべて相手が払ってくれるのですから問題はないと思います。でも、こちらの過失が大きく自賠責のみが頼りとなれば、治療費だけで120万円をすぐ使い切ってしまうことになりかねません。

 事故の場合に、健康保険が使えないと思い込んでいる人もいますので説明しておきます。健康保険指定病院でさえあれば、交通事故で治療する場合は必ず健康保険が使えます。病院の治療費の請求は1点単価というので行なわれます。

その単価が、健康保険で10円、労災で12円、自由診療は病院ごとに自由に決められるのですが平均で約20円と健康保険の倍も高いのです。何もいわなければ、病院は自由診療で治療しようとします。請求の手間がかからず、さらに儲かるからです。

 人と人がぶつかり合ってケガをしたら、健康保険は使えますよね。それと同じなんです。交通事故では、健康保険が使えないと思い込んでいる人がいますがまったくの誤解です。勿論、健康保険法で認められていない治療まで認められる、というのではありません。

 もし、どうしても事故でかかった病院が、健康保険は使えないと言い張るのでしたら、厚生労働省に確認してください。過去に誤解のないように、と通達まで出ていることなのです。それから、自由診療で治療していて,もうすぐ治癒するような場合でも、申し出れば健康保険に切り替えることができます。
 病院はいやな顔をするでしょうが、最初からそうしなかった病院が悪いのです。遠慮することはありません。遠慮して泣きを見るのはケガした本人だけです。
 
傷害の場合は、120万円が限度ですが、治療費をはじめ、休業損害から傷害慰謝料までいろいろな項目があります。健康保険の倍もかかる自由診療を受けてしまうと、ケガの程度にもよりますが治療費だけでいっぱいになり、まったく他の費用をもらえなくなってしまうのです。

 例えば、自由診療で治療費が150万円とします。すると、限度の120万円を超えてしまうので、差額の30万円は自腹ということになってしまいます。過失割合が5分5分の事故の場合は、相手方は150万円の半分の75万円を負担しなければいけないことになりますが、すでに自賠責から120万円の支払を受けていることになり、相手の分は賄われていることになりますから、30万円はすべて自腹ということになってしまうのです。
 
 120万円の限度は厳然と存在します。しかし、言葉は悪いけれど早い者勝ちなのです。例をあげます。健康保険で治療していて、3割は自己負担しています。月単位で診断書とレセプト(診療報酬明細書)をとり、休業損害などとともに請求します。保険会社では、請求が来た順に処理します。その請求がトータル120万円になれば、それ以降の請求はアウトになります。同時にくれば限度まで残っている金額を按分されます。要するに被害者からの請求も社会保険からの請求も優劣はないのです。だから早い請求にいってしまうのです。健保や国保はだいたい3ヶ月に一度の請求となっています。全体で120万円を超えてしまうような場合は、うかうかしていると健保や国保などに持っていかれてしまうことになります。

 過失割合から見て、ほとんど相手が悪いという場合でも、相手に資力がなく任意保険にも入っていないで自賠責のみしかないという場合でも同じことですね。治療費をできるだけ抑えるほうがよい、ということがお分かりいただけたでしょうか。自分は悪くないのに何で自分の健康保険を使わなきゃいけないんだ、と怒るまえに冷静に考えてください。


相手が複数の事故の場合
 
 自賠責保険の大きな特徴の一つは、加害者が複数いれば、その分請求できるということです。もう一つ付け加えると何度事故を起こしても対応されるということです。

 例えば、助手席にのっていて(運転していたのは誰か、については問題が発生しますが)事故にあい、双方の車に過失があったような場合は、乗っていた車の自賠責にも、相手の車の自賠責にも請求できると言うことです。

 これを『共同不法行為』による事故といいます。死亡などの場合は3000万円×2=6000万円となります。3台ならば3倍です。
 吹雪の中の高速道路の死亡事故で、明確な被害者、加害者の判定ができず、結果として互いが加害者として相手方の自賠責に請求をかけることになり、9000万円の賠償金が払われたケースがあります。

 同乗者が事故に遇った場合は特に注意しておきたいポイントです。


                     

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